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【歯科医師が解説!!】福岡県内の小児歯科で虫歯治療を受けた2歳女児が2日後に死亡

   

福岡県内の小児歯科で虫歯治療を受けた2歳女児が2日後に死亡するというニュースが報道されました。

このニュースについて現役歯科医師が解説していきます。

報道内容

 去年7月、福岡県内の小児歯科医院で虫歯を治療した2歳の女の子が低酸素脳症に陥り、2日後に死亡していたことが関係者への取材でわかりました。

死亡したのは当時2歳だった山口叶愛ちゃんです。叶愛ちゃんは去年7月、福岡県内の小児歯科医院で局所麻酔を使用した虫歯の治療を受けた後、唇が紫色になり、目の焦点が合わない状態になりました。

関係者によりますと、異変を訴える両親に対し、男性院長は「よくあることだ」と説明して、何の医療措置もとらず、およそ45分後に両親が自力で叶愛ちゃんを近くの病院に運んだということです。叶愛ちゃんはその後、大学病院に救急搬送されましたが、低酸素脳症に陥り、2日後に亡くなりました。

大学病院から通報を受けた警察は、業務上過失致死の疑いがあるとみて捜査しています。小児歯科医院の院長は「必要な措置はとったと考えている」とコメントしています。(15日18:55)Yahoo!ニュース

低酸素脳症とは?

日本救急医学会によると

循環不全または呼吸不全などにより,十分な酸素供給ができなくなり脳に障害をきたした病態を低酸素脳症という。低酸素脳症には,通常,組織への血流量の低下(虚血)と,血液の酸素運搬能の低下(低酸素血症)の2つの病態が混在していることが多いため,低酸素性虚血性脳症(hypoxic-ischemic encephalopathy)とも呼ばれる。原因として,心筋梗塞,心停止,各種ショック,窒息などが挙げられる。心停止により脳への酸素供給が途絶えると,意識は数秒以内に消失し,3‐5分以上の心停止では,仮に自己心拍が再開しても脳障害(蘇生後脳症)を生じる。蘇生後脳症の転帰不良を予測する因子としては,自己心拍再開後24時間以内のミオクローヌス・てんかん重積状態の出現,瞳孔反応や角膜反射の消失,および3日後の運動反応の消失または四肢の異常伸展反応があげられる。治療として,単に血圧を維持するだけでは生存率・社会復帰率の改善に繋がらず,全身の臓器および末梢組織への血流を維持することが重要である。さらに心停止蘇生後脳症患者では,侵襲性高血糖や代謝亢進に基づく高体温が発生することが多く,これらの高血糖,高体温は神経学的転帰を悪化させる重大な要因である。したがってこれらを予防,管理するとともに,適切な呼吸循環管理により二次性脳障害を最小限にすることが必要である。近年,心停止患者で自己心拍再開後も昏睡状態が続く場合,脳低温療法を施行することで,機能的転帰が改善する可能性が報告されている。

なぜ低酸素脳症になったのか?

今回の死亡と歯科治療との因果関係は特定されていません。

警察は業務上過失致死の疑いで調べを進めているようですが、まだはっきりしていませんのでここからはあくまで可能性として書いていきます。

1、歯科局所麻酔によるアナフィラキシーショック

歯科局所麻酔によるアナフィラキシーショックは非常に頻度としては低いです。

また、局所麻酔のアナフィラキシーショックといっても麻酔薬が原因ではなく、局所麻酔液の中に含まれる保存液やラテックスなどの成分で起こることが多いとされています。

特に今回のケースでは、初めて麻酔を使った治療を行ったとの報道から考えると、麻酔薬は生まれてから1度も体内に入ったことがないと思われるので、アナフィラキシーショックが起きたとすると、局所麻酔薬中に含まれる保存液やラテックスが原因である可能性が考えられます。

アナフィラキシーショックが起きてしまった場合、重篤なケースでは、循環虚脱や呼吸不全を引き起こし、低酸素脳症になる可能性は十分に考えられます。

2、誤った抑制方法による窒息

2歳児の治療を行う場合、多くの場合で非協力的で泣きながら暴れる子供をスタッフや両親が抑制して(押さえつけて)動かないようにして治療を行うことが非常に多いです。

これは、安全に治療を行う上で必要なことで、多くの小児歯科で行われていることです。

小児歯科を専門にしているドクターであれば、手や足の関節をしっかり抑制しつつ、呼吸は出来るように胴体部分には体重をかけない抑制方法を知ってるはずです。

しかし、抑制の方法(押さえつけ方)を間違ってしまうと、大人が2歳児の上に乗っかった状態になってしまい、子供は呼吸が難しくなり、呼吸困難になってしまい、低酸素脳症になってしまうことは十分に考えられます。

3、嘔吐による窒息

今回の虫歯の治療は、ラバーダムをして奥歯の治療をしていたとのことです。

まず、この治療方法は小児歯科では非常に一般的な治療です。

ラバーダムはゴムのシートと金属のフレームを使い治療する歯のみをシートから出して、周りの歯や舌を傷つけないようにしたり、器具などを誤って飲み込まないようにするために行うものです。

逆にこの処置をせずに小児の治療を行うことの方が危険です。

なので今回の小児歯科は確かに、きちんとした治療を行っていたのは間違いないでしょう。

しかし、ラバーダムの場合、小児が嘔吐したことに気づかなければ、嘔吐物を吐き出すことができず、口腔内にたまってしまい、窒息してしまうケースがあります。

4.迷走神経反射

治療などの強いストレスによって急激な血圧の低下を起こすことがあります。これを迷走神経反射といいます。

これは、成人でも起こることがあり、麻酔などを使った治療のストレスで気分が悪くなったりするケースがこの迷走神経反射によるもです。

2歳児の場合、うまく意思表示ができず、血圧の低下を起こしているにも関わらず、治療を続けていた可能性もあります。

なぜ男性歯科医師は「よくあることだ。」と言ったのか?

なぜ男性歯科医師は「よくあることだ。」と言ったのでしょうか?

これは、小児の治療に慣れているからこそだと思います。

ニュースでは両親のコメントしか発表されていなので、処置後の状態が実際にどうであったかはわかりません。

実際に、2歳児が治療を行う場合、大泣きのうえに暴れて治療が終わった頃には疲れてしまい、グッタリしている事はよくあることです。

治療の途中で疲れて寝てしまうこともあります。

おそらく、この男性歯科医師はこのように大泣き後で疲れてグッタリしているだけだと判断したと思われます。

小児の治療に麻酔は必要なのか?

小児の治療の場合、麻酔を使うことが非常に多いです。

小児の場合、痛みを我慢することが難しく、痛みが強ければ治療中に大泣きをして、大暴れすることも少なくありません。

また、乳歯は永久歯に比べて歯の表面から神経までの距離が近く、歯を削ると容易に痛みを感じてしまう為に、少しの虫歯の場合でも麻酔を使って治療を行うケースが多いです。

対策

自分の子供がこのような事故に巻き込まれないようにするにはどうしたらいいのでしょうか?

対策1 虫歯を作らない

歯科治療はちょっとした治療でも危険を伴います。

特に泣いたり、暴れたりする子供の治療ではその危険度は非常に高いもになります。

ですから、まずは虫歯を作らないことが大切です。

定期的な検診やフッ素塗布で虫歯の治療をしなくていいように心がけておきましょう。

対策2 大学病院の受診

基本的に、協力状態のいい子供の場合、治療中に事故が起こることはほとんどありません。

多くの事故は暴れる子供を抑えて治療を行った場合などに起こります。

大暴れして、治療が難しい場合は大学病院への紹介を相談してみてもいいかもしれません。

対策3 子供をよく観察しておく

大暴れしながら治療を受けた場合などは、暴れ疲れてぐったりしているケースも多いです。

それが、暴れ疲れたせいなのか、判断するのは容易ではありません。

治療が終わったあとは、子供の事をよく観察し、いつも寝ている時と様子がおかしい時はすぐに救急病院を受診するようにしてください。

まとめ

今回の事故では、歯科治療と死亡との因果関係は立証されず、刑事責任を問われることはありませんでした。

まずは、歯科治療が危険と隣り合わせであることをきちんと理解し、歯科治療を受けなくてもいいように日ごろのケアをきちんと行い、定期的に歯科医院で検診を受けて虫歯を予防するように心がけましょう。

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